「あら、あたしがそんなに珍しいかしら?」
カウンターから身を乗り出してグッと顔を近づけてくる。きめの細かい艶やかな肌に、よく見ると目を見張るほどの整った顔立ちをしている。年齢は不明だが、恐らく三十代くらいだと推測できる。
「い、いえ、慣れない場所だから緊張しちゃって」
「あーら、まぁそうよねぇ。今どきの若い子が、普通はこんな場末のバーになんてこないわよね」
「あ、いえ……風情があって目新しいです」
他に思いつかず、精いっぱい絞り出した言葉がこれだった。店内は薄暗くてさびれてはいるものの、小綺麗にしてありカウンターテーブルもピカピカに磨かれているので不潔さはない。
「柚ちゃん、面白いわね」
「い、いえ」
目の前で楽しそうに笑われて、反応に困ってしまう。隣から威圧的な視線を感じたのは私だけじゃなかったようで、拓さんは肩をすくめてからキッチンへと戻ってシェイカーを振った。
三角形のカクテルグラスに濃いオレンジ色のカクテルが注がれる。そこにチェリーを添えると、拓さんはそれを私に差し出した。
「わぁ、かわいい」



