「単純な話だよ。
俺は君に興味を持ったからもっと君を知りたいと思って会いに来たんだ」

「……でも、私はあなたに然程興味を持ってない上に知られたくもないんですけど」

「うん、だからさ、とりあえず一緒に食事なんてどう?」

「えっと、話聞いてますか?」

沙弓が溜め息混じりに問いかけるけれど陽人は笑みを崩さず話を噛み合わせる気もないように見える。
一体どうやって断ろうかと考えていると突然陽人がくるっと体の向きを変えて背中越しに振り返った。

「さ、早く行かないと置いていくよ」

「私一緒に行くって言ってまけんけど!?」

「この近くで美味しいご飯食べれるところない?」

「話聞いてくださいってば!
て言うか、自分から誘っておいて私が案内するんですか!?」

「早く、俺もう腹ペコだから」

そう言われた沙弓は口を引き結び大きな溜め息をつくと重い足を運んだ。

他人にそれほど興味がない沙弓は意外と面倒見はいい性格で、お腹を空かせた陽人を放っておくのは良心が痛むと諦めの気持ちを抱いて歩きだしたのだけれど、その後ろを着いてきていた陽人が歩きながらしてやったりとほくそ笑んでいたのは気付くことがなかった。