二人を繋ぐ愛の歌

「嶋川は私ですが……」

注目されてしまい渋々立ち上がって名乗った途端、宣伝部長は沙弓に向かって大股でやってきた。

怖い怖い……!と咄嗟に身構えそうになったがなんとか堪えてしっかりと宣伝部長を見据えると、突然ばっと両手を沙弓に向けて伸ばしてきて咄嗟にぎゅっと目を強く握ると両肩に大きな手を勢い良く乗せられた感覚。
かと思うと何度もガクガクと揺さぶられた。

ちょっと、これ、今はセクハラとかパワハラとかで訴えられますよ……っ!

そう心の中で叫んでいたら宣伝部長が大きな声で、でかしたっ!!と叫んできた。

「君がビネガードリンクの試供品を渡した相手に芸能関係者がいたらしくてな、よほど気に入ったのかあのビネガードリンクの宣伝をするなら是非やらせてほしいと先方から電話がかかってきたんだ!」

「……芸能関係者、ですか?」

「そうだ!しかも話を持ちかけてきたのが、あの知名度の高いShineという人気アイドルだぞ!」

あ、陽人さん……。と思っていたらその場にいる人達から大歓声が響き渡った。

「嘘だろ!?あのShine!?トップアイドルだろ!?」

「やっぱりあの電話本物だったのね!」

「ええっ!すごいっ!!私達、偶然にも二人に会えちゃったりして……!」

わーわー、きゃーきゃー盛り上がる同僚達に沙弓は目を丸くすることしかできなかった。

前に遥にShineの事を知らないと言った時に“信じられない”と言われたけれど、こんなにたくさんの人が興奮するほど人気アイドルだったのかと、今更ながらに自分が如何に芸能界に疎かったのかを実感した瞬間だった。