二人を繋ぐ愛の歌

「遥、一体どうしたの?息してる?ずっと吐いてないよ?」

心配して顔を覗きこもうとしたら遥が勢いよく顔を上げたのでぶつかりそうになり、思わず仰け反ってしまった。
呆然としていた表情から見る見るうちに頬に赤みが差して目も輝きだした遥の今までにない様子にまだ隣にいた南尾ともう一度顔を見合わせた。

「遥、本当にどうしたの?」

「沙弓っ!電話……電話が来たのよっ!」

「うん、電話してたのは知ってるよ。
ここにいる全員が大声出した遥を見てたんだから」

「違うのよっ!違わないけど違うのっ!普通の電話じゃなかったのよっ!!」

「……悪戯?」

「違うっ!!……って思いたいけど……でも……」

さっきまでの勢いはどこへやら、遥は何やら呟いていて何がなんだかわからない。

さっきの電話はなんだったのか、あの取り乱しようは何なのかが全く理解出来なくてついに離れた所に座っていた上司が重い腰を上げてこちらに近付いてきた所でドアがノックもなく勢いよく開け放たれた。

本日二回目の驚きに全員が遥からそのドアに視線を移すと、そこには遥が内線をかけていた強面で有名な宣伝部の責任者である部長が血相を変えて肩で息をしながら立っていた。

「嶋川……嶋川沙弓と言う社員はいるか!?」

何故か大きな声で名指しされて目を限界まで見開いた。
居留守を使いたかったが返事をしなくても全員が一斉にこっちに視線を移せばここにいると言ったようなものだった。