二人を繋ぐ愛の歌

前回と同じように机に弁当を並べるのを手伝ってもらい、それが全部並べ終わった時に若干廊下が騒がしくなってきたなと思ったらハルトはそっとドアを開けて外を確認した。

「あ、堀原(ほりはら)さん!ちょっと頼みがあるんですけど」

外にいた誰かに話しかけてから一度こちらに振り返ったハルトは、俺達のマネージャー。と言った。
先程声をかけていた堀原と言う人のことだろうと思っていると、またハルトはドアの隙間から廊下を暫く覗き見ていた。

「お待たせ、もう出ていいよ」

言われて廊下に出るとそこにはスタッフらしい人が数人いて、沙弓を見ると笑顔で会釈してくれたので沙弓も会釈を返した。

「休憩しながら撮影の打ち合わせがあるから下まで送れないけど……平気?」

「大丈夫ですよ。
今日でここの配達も三回目ですから、セキュリティも問題ないです」

「それは心配してないけど……。
あのさ、さっきみたいに馴れ馴れしい奴に会っても相手したら駄目だよ?」

「ああ……それもきっと大丈夫ですよ、そんな特異な人はそういないはずですから。
では、失礼しますね」

何か物言いたげなハルトに笑顔で会釈してから軽くなった台車を押してこの後の予定を頭に浮かべた。
今日はこのテレビ局の他にも後数ヶ所配達に回る予定で、最後に【多幸】に戻ってからはまた店にも立たされるだろう。

実質無休労働なので少しずつ疲れが蓄積されているのを感じつつある沙弓はエレベーターに乗って壁に凭れると階数表示をじっと見つめていた。