二人を繋ぐ愛の歌

「私、陽人さんはテレビ局のスタッフさんだと思ってました」

「ああ、あの時は顔は見せてても今みたいなアイドルっぽい衣装着てなかったしね。
でも大体の人は顔見た瞬間にShineのハルトだって気付くから君の無反応は新鮮だった。
本当に知らないのか、それとも敢えて興味のないふりをしているのかどっちだろうって毎回反応を探ってたくらいだし」

「えっと、芸能人に興味がないどころか人の顔と名前を覚えるのは本気で苦手でして……気がつかなくてすみません」

「いや、そのおかげで君に興味がわいたから。
結果的には良かったのかもね?」

そう言ってにっこりとハルトが微笑んだとほぼ同時にエレベーターが目的の階に到着した。
台車を押しながら二人で一緒に歩いているとすれ違う女性達が目を輝かせながらハルトに視線を向けていて、最後には沙弓を睨み付けるようにして去っていった。

「……なるほど、確かに私みたいに無反応だったら新鮮でしょうね」

「そうなんだよね。
キャーキャー熱を上げないでこうして自然体でなんの思惑もなく話してくれる人なんて周りに殆どいなかったし……だから君はある意味、俺にとって貴重な存在かな?」

「……そうやってごく自然にリップサービスをしているから周りの人達が必要以上に熱を上げてしまってるんじゃないですか?」

「俺、誰にでもリップサービスしてるわけじゃないんだけどな……。
そんなことしなくてもこの顔見たら勝手に寄ってくるし……」

困ったように呟かれたハルトの声は小さくて沙弓には届かなかった。

ガラガラと台車を押して目的の部屋に着くと、ハルトに少し待つように言われてその場に立ち止まった。