二人を繋ぐ愛の歌

「君は芸能人とか一般人とか関係ないタイプの人だと思ってたけど……違ったのかな？」

壁に凭れて腕を組んで不満そうに言われたその言葉はさっき沙弓が言った言葉についてなのだろうけれど、初対面のアイドルが自分の何を知っているのだろうかと沙弓は眉を潜めた。

「確かに私自身は芸能人だろうが一般人だろうが興味がないので関係ないですね。
でも、他の人は違うでしょう？特にさっきのような方は私みたいなどこにでもいるような一般人よりも、もっと綺麗なモデルのような人に声をかけるタイプだと思ったのでああ言ったんです。
……と言いますか、初対面の貴方にそんな事を言われる筋合いはないと思います」

ほんの少し目に力を込めてそう言うと、男性は大きく目を見開いたかと明らかに肩を落として大きく溜め息をついた。

「初対面？……嘘でしょ、全然気付いてなかったの？」

「え？どこかで会ったことありますか？
実は声は聞いたことあるなと思ってたんですけど、芸能人の方に知り合いなんて……」

そう焦っていると男性は組んでいた腕を解き徐に綺麗にセットされていた髪を乱しだした。
突然の行動に驚いているとその男性は長い前髪で顔を隠しチラッとこっちに視線を寄越したのだけれど、その姿に沙弓は見覚えがあり目を瞬かせた。