「っ……!?」

『やった……っ!!ついにやったっ!!』

息が出来ないほど強く抱き締められ、一番に感じたのは感極まったように声を震わせる耳元から聞こえるハルトの声。
目を開けて見えたのは発表されたランキングで一位に光り輝いたShineの名前だった。

「一、位……一位だ……一位だよハルトッ!!やったよっ!!」

緊張の糸が切れてしまい壊れたラジオのように同じ言葉を何度も繰り返す沙弓の頬に両手を添えたハルトは額同士をくっつけると笑顔で何度も頷いた。
あまりにも嬉しくてもう一度強く抱き締め合うと、次に妙な違和感を感じた。

……さっきの喧騒は?

結果発表の時には耳をつんざくほどの声だったのに、今はシンとしている。

その事に気付いてそっと目だけを動かすと周りの観客、スタッフ、テレビでの生放送を撮っているのであろうカメラマン。
ステージ上のユウナとスクリーンに映っている拓也と勇人がみんな同じように限界まで目を見開いて驚きを隠せないでいるようだった。

「沙弓……あんた、陽人さんってもしかして……」

遥の唖然とした声が聞こえてきたけれど、沙弓は口をパクパクと動かすだけでなにも答えられなかった。

『さ、さあ!見事下克上を成し遂げました!みなさんのおかげです、ありがとうございますっ!!と言うことで、その曲を歌いたいと思いますっ!!
いいよねっ!?ハルト、歌っていいんだよねっ!?』

何とかその場の雰囲気を元に戻そうとしているユウナの慌てた声にハルトは何か合図を送ったようですぐに曲が流れ出した。

これでハルトはステージに戻っていくのかと思ったけれど、そんな予想に反してハルトは沙弓の顔を誰にも見えないように自分の胸に顔を埋めされるように抱き締めながら歌った。

沙弓からは見えないが、たまに感じるハルトからの熱い視線と共に贈られた歌詞にある愛の言葉に周りの観客もハルトの想いを感じ取ったのか、歌い終わったときには暖かい拍手と歓声が周りからもスクリーンからも暫く鳴り止まなかった。