二人を繋ぐ愛の歌

「今日は俺達の撮影現場の方で【多幸】の弁当を注文してたんだけど、予定より休憩が早まってね。
だから早めに持ってきてもらおうと思って迎えに来たんだけど……お邪魔だったかな?」

「いえ、そんなことないです。
すぐにお届けします」

この馴れ馴れしい男から解放されそうで良かったと思いながらチラッと未だに肩に回されたままの手を見ると、目の前のアイドルのような男性は笑顔なのに冷たくて鋭い眼差しという器用な表情で沙弓の隣にいる男性を見据えた。

「君、まだ新人だよね?あまり調子に乗って誰彼構わず馴れ馴れしくしない方が良いと思うよ?
……君自身の為にも、ね」

そう言い終える頃には笑顔は消え、目は完全に笑っていないし声も地を這うようなとても低いものになっていた。
あからさまに機嫌が良くないことを物語っていて、肩に手を回したままだった男性はビクッと反応したかと思うと慌てて手を離した。

「そ、そうですよね……えっと、じゃあ俺はこれで失礼します!」

とても慌てた様子で深くお辞儀をしたかと思うと弾かれたようにその場を去って行った男性の後ろ姿を半ば呆然と見届けていたらアイドルの男性は腰を少し屈めて沙弓の顔を覗きこんできた。