二人を繋ぐ愛の歌

「ただいまっ!やっぱり歌詞は……」

「じゃあメロディを……」

帰ってくるなりまた新曲の細かいところを話し合う二人の真剣な眼差しを暫く見つめてから沙弓は急いで弁当を食べてその場を辞した。

その日以外もジャケットやPV撮影の休憩に弁当の配達の手伝いをして少しずつ新曲のCDが出来上がっていく様を見ていると、沙弓もワクワクする気持ちと緊張する気持ちが相まって落ち着かなくなってきた。

「……何で沙弓がソワソワしてるのさ」

「だって、配達の手伝いをすればするほど新曲がどんどん出来上がっていって対決の日が近付いてくるんだもの……落ち着けるわけないじゃない」

久しぶりに丸一日の休日となったハルトがいる家での昼下がり。
何度もコーヒーのカップを持ったり下ろしたり、意味もなくスプーンでかき混ぜているのを見たハルトはそんな沙弓に笑いかけてきた。

ハルトとユウナ、そして周りの人達がどれだけの時間と労力をかけて曲を作り上げ、そしてどれだけの熱意を持って歌に込めた想いを届けようとしているのかを見てきた。
その努力が結ばれてほしいと願えば願うほど、気が休まらない状態だった。

「やるだけのことはやった。
後は俺達の想いが届くのを信じるだけだよ」

「うん……そうだよね」

分かってはいるし信じてはいるけれど、やっぱり相手は長年頂点に君臨するKaiserなのだ。
やはり革命を起こすのは難しいのではと気弱になってしまうのは仕方ないことだった。