二人を繋ぐ愛の歌

そんな穏やかでどこか恥ずかしい日々を過ごせるのは毎日ではなかった。

売れに売れてるアイドルが家にいるのなんて滅多になく、帰ってきたとしても沙弓が寝てから帰ってきて起きる前に出ていってしまう。
正しく寝るためだけに帰ってきていると言った感じだった。

「はぁ……」

「何よその溜め息。
幸せが逃げてるわよ？」

今日何度目かになる溜め息に遥が眉を寄せるけれど、沙弓はその言葉に答えることなく再び溜め息をついた。

最近、陽人がいると部屋が温かくてほっと出来るのに、いないときはガランとしていて暗くて寂しい感じがする。

陽人が転がり込んできてから早一月。
今までどうやって一人で暮らしていたのか分からないほどだった。

「これは……ヤバイかも」

新曲が出来て陽人が沙弓の家にいる理由がなくなってしまったら、果たして沙弓は今まで通りの一人暮らしの生活に戻れるだろうかと心配になってしまう。

そんなことを悩んでいると突然隣にいた遥に思いきり肩を何度か叩かれ、沙弓は眉を潜めて遥を見ると遥は反対の手で自分の口を押さえてパソコンの画面を凝視していた。

「遥、また仕事中にサボって……」

そう言いながら遥の画面を覗き見ると、沙弓も驚いて目を丸くした。

そこにはShineとKaiserの対決する新曲の発売日を知らせる記事が大きく表示されていた。