二人を繋ぐ愛の歌

「ちょっ……やだ、恥ずかしいから離して……」

「もう少し。
新曲のためだから」

そう言いながら右手で何度か髪の毛を鋤かれていると次第に恥ずかしさで強張っていた沙弓の力も抜けていき、陽人の肩に頭を預ける頃には全身の体の力が抜けていた。

「……一緒にいたりこうやっていることの何が新曲ためになるの?」

「全部が新曲のためになってる。
今度の新曲は俺は沙弓への、勇菜は婚約者への想い全てを込めて作ってるんだ。
だから沙弓と一緒にいるだけでも新曲のためになってるけど、こうやって触れ合ってる方が一番ためになるんだ」

至近距離で目を細めてそう言われれば、沙弓は慌てて顔を背けて一言、そう……?と言うことしかできなかった。

そんな素っ気ない沙弓の言葉に反して陽人は楽しそうに肩を震わせて笑っていることを感じれば、きっと背けた顔が真っ赤だと知られてしまっているのだろうことに気付いて悔しい気持ちにもなるが、抱き締めている陽人の温かい体温と髪を鋤く優しい手の動きにすぐにどうでもよくなって静かに目を閉じた。