二人を繋ぐ愛の歌

「もうっ、外であんな風に抱きついて来ないで!あと南尾さんに失礼すぎるよっ!」

あの後南尾に別れを言って近くの駐車場に車を止めていると言う陽人に連れられて車に乗せてもらい、マンションに帰りついてリビングに入るや否やそう言い放つと陽人は眉を寄せ不満げな顔をしていた。

前日沙弓の家への同居の協力を申し出た陽人は昨日から沙弓の家にやってきていた。

チラッと小さなテーブル一杯に広げられた書きかけの楽譜とチラホラと床にも落ちている紙を見ると、先にこの部屋に帰ってきて時間を見計らって迎えに来てくれたのだろうことが分かった。

「忙しいなら迎えに来ないで待っててくれて良かったのに……」

「新曲のために沙弓と少しでも長く一緒にいれる時間がある時は傍にいたいし、迎えに行ったり送っていける時はなるべくそうしたいって思ってるんだけど」

「いや、送っていってもらうのはちょっと恥ずかし……って、新曲のため?」

気になった言葉を拾って首を傾げると陽人は目を細めて柔らかく微笑んだ。
そして手招きをされて沙弓は少し戸惑いながらも陽人に近付くと手を捕まれてグイッと引き寄せられた。

「きゃっ!?」

「あー……落ち着く……」

突然のことにバランスを崩せばしっかりと抱き止められた。
そして陽人は沙弓の首筋に顔を埋めるとすうっと息を吸い込んだ。