連れてこられたのは会場から程近い駐車場。
そこに陽人の車が置いてあるらしくそこまで向かうと、有無を言わさず助手席に乗せられた。

すぐに陽人が運転席に乗り込むとハンドルに腕を乗せてその上に額を乗せる。
俯いた状態となった陽人の顔が見えないので沙弓は少し悩んだ末に小さく声をかけると陽人が突然顔を上げて抱きついてきた。

「っ!?」

「あー……良かった……。
沙弓がちゃんと断ってくれてて……」

心底安心したと言った様子の陽人に沙弓は何度か瞬きすると、陽人は小さく息をついた。

「昨日も聞いてたけど、やっぱり不安で仕方なかったんだ……。
俺と付き合ったりして世間に好機の目に晒されることを選ぶよりも、南尾みたいな男と普通の恋愛を選ぶんじゃないかって」

「何、それ……」

陽人から紡ぎだされた言葉に沙弓はそっと腕を上げると、手首のスナップを効かせて陽人の後頭部を思いっきり叩いたーー。