二人を繋ぐ愛の歌

「昨日はありがとう。
みんな腹空かせて待ってたから助かった」

「どういたしまして。
あんなに遅い時間でも仕事だなんて大変なんですね」

「まあ、昼も夜もないような仕事だからね」

そう言って苦笑する陽人にテレビ局のスタッフの大変さを感じると、沙弓は持っていた通勤鞄の中に手を突っ込んで漁り目的の物を取り出して一本陽人に差し出した。

「良かったらこれどうぞ」

「……これは?」

「うちの会社で作った新製品だそうです。
試供品で申し訳ないですけど」

助手席の窓から手を入れて半ば押し付けるようにして渡すと、それを受け取った陽人はまじまじと試供品のラベルを見ていた。

「ビネガードリンク?」

「お酢が体力回復に効果があるって今我が社で力を入れて売り出し中なんです。
この新製品はお酢が苦手な人でも飲めるようにフルーツの香りや味がするように工夫してるようですけど……お酢、飲めます?ちなみに私は苦手です」

そう言うと陽人は一瞬キョトンとした。

その顔はさっきと同じように試供品を誰かに配った時に“私はお酢が少し苦手です”と言った時に殆んどの人が見せる表情だった。
さしずめ、“苦手な奴が何で持ち歩いて配ってるんだろう”と言った表情だろうか?

そんな事をぼんやり考えているとふと視線を感じたので意識を戻すと、陽人が微笑んでいた。

「普段はあまり飲まないけど一応飲めるよ、ありがとう」

「そうですか、良かったです。
良かったらまた配達の時に会えたら味の感想聞かせてください」

そう言って体を車から離そうとすると、試供品をまじまじと見ていた陽人が、あ……。となにかに気づいたように小さく口を開いた。