二人を繋ぐ愛の歌

ハルトの説明によると沙弓がお湯をかぶったときにはライブはもう終盤だったらしく、アンコールもこなし、握手会も終わったらしい。
それほどの時間眠っていたのかと驚きながらも、沙弓の他にお湯をかぶった人はどうしたのかと聞いた。

「会場入りする前にレインコートの有無を必ず聞いていたはずだから、ほとんどみんな濡れてないはずだよ。
万が一濡れてもライブに行くには着替えを最寄りのロッカーに入れたりして、どこかで着替えて帰る人が多いから問題ない」

「え……わざわざ着替えて帰るの?」

「例えば、明らかにアイドルのファンだと分かる衣装を身に付けて目立つ格好になっていたり、ライブで一緒に盛り上がって汗をかいた人とかはそのまま電車に乗るのは抵抗があるからって着替える人が多いね」

「そ、そうなんだ……」

何せライブには初参加の沙弓には着替えを持ってきてどこかで着替えるなんてことは全く考えつかなかった。
きっとハルトはそんな沙弓のことを予想して着替えを用意してくれていたのであろうことを考えて、あっ!とあることを思い出して顔を上げた。

「わ、私、堀原さんにこの服借りたんだけどこれって……」

「ああ、俺からのお詫びの意味を込めたプレゼント。
想像通り、よく似合ってる」

にっこり微笑んでそんなことを言うハルトに沙弓は顔を赤らめた。
普段はワンピースなど滅多に着ない上にハルトに愛しそうに目を細められてしまったら恥ずかしくて仕方ない。

どう言えばいいのかと悩んでいるとドアからノックの音が聞こえてきて、ハルトー?とユウナの声が聞こえてきた。