二人を繋ぐ愛の歌

テレビで暫くライブの様子を見ていたが、やがて沙弓はテレビの電源を消すと目の前のテーブルに突っ伏した。
これでは家でDVDを見ているのと一緒ではないかと気付いて、少し投げやりな気持ちになってゆっくりと目を閉じた。

どれくらいそうしていたのか、いつの間にか眠ってしまっていた沙弓はまだ意識が浮上していない状態の中で誰かが部屋に入ってきた気配を感じた。

テーブルに突っ伏した沙弓に向かって早足で近付くと顔を覗きこみ、やがて安心したような息を漏らす。
優しく頭を一撫でしてから何かを体にかけて、その誰かはそっと部屋を出ていった。

その一連の動作をぼんやりとした意識の中、何度か思い返した後に慌てて体を起こすとパサッと何かが床の上に滑り落ちた。

「これ……」

見るからにアイドルの衣装と言ったきらびやかな上着が落ちていて、沙弓は慌てて拾い上げた。
サイズ的に男物であるそれは、ハルトがやって来て沙弓に掛けてくれた物であるのがすぐに分かった。

「ハルト……」

その衣装をそっと胸に抱くと、昨日抱き締められた時と同じハルトの香りがした。
どこかキュンとなるその香りにドキドキしていると突然ドアが開いて、シャワーを浴びた直後なのか髪がまだ若干濡れた様子のハルトがそこに立って目を丸くしていた。