二人を繋ぐ愛の歌

『さて、次のステージではみんなも持ってきてるレインコートを着て準備をしておいてね!』

レインコート?とユウナの言葉に沙弓は首を傾げるが、周りはいそいそと持参していたりグッズ販売で買ったらしいレインコートを身に付け始めていた。
隣の南尾やその隣の上司達までもがレインコートを着ていたので沙弓は驚いてしまった。

「南尾さん、どうしてレインコート持ってるんですか?」

「え?チケットにもレインコート持参って注意書があったし、会社で貰ったときにも口頭で言われたんだけど……嶋川さん、持ってきてなかったの?」

そう聞かれて沙弓は何度か頷く。
この日のライブを楽しみにしていて何度もチケットを見ていたけれど注意書には気付かなかった。
それに、会社からではなくハルトから直接チケットを貰ったときも昨日もレインコート持参なんて一言も言われてない。

もしかして確信犯か!!とステージのハルトを見やれば、その視線に気付いたらしいハルトはいつの間にか先程とは違うレインコートを身に纏った状態で沙弓を見下ろすとニヤッと口角を上げた。