二人を繋ぐ愛の歌

「嶋川さんの気持ちは分かったけど、俺も気持ちの整理がつくまでは嶋川さんのことを好きでいることを許してくれる?」

「え……えっと、はい……?」

それくらいの細やかな気持ちを否定することなど他人の沙弓が出来るはずがないのは百も承知で、沙弓は戸惑いながら頷くと南尾は嬉しそうに微笑んだ。

「ありがとう。
……もし、気持ちの切り替えが出来てない間に彼に泣かされるようなことがあったら……その時は強引にでも奪いにいくから」

「っ……!?」

まさかそんなことを言われると思っていなかった沙弓は驚いて目を見開くと南尾はそんな沙弓を見て悪戯な笑みを浮かべて笑い、周囲を見回した。
習って沙弓も見回せば、Shineのグッズを持っている人達が全員同じ場所に向かって歩いて行っているのに気付いた。

「えっと……あの人達についていったらライブ会場につきますかね?」

「ついでにあの人達の行動を見ておけば、ライブ会場への入り方も分かるかも」

二人そう言って頷くとどちらともなく歩きだし、Shineの団扇を持っている女性達の後ろを暫く付いていった。

その間、南尾から当たり障りない話題を振られそれに答えては沙弓もその話題から話を広げていく。
南尾の分かりやすい沙弓への気遣いに申し訳なく思いながら沙弓はそれに甘えることにした。

暫く歩いてついた先の大きなドームでは開場を待つための長蛇の列が成されていて、南尾と共に唖然としてしまった。

「すごいね、この人達全員Shineのファンなんだ……」

「そんな凄い人達にCMしてもらったんですね……」

開場までまだ時間があるのにみんな笑顔でワクワクしている様子が見てとれる。
こんなにたくさんの人達を笑顔に出来る、そんな凄い人と昨日一日一緒にいたのだと思うと沙弓は一人、落ち着かない気持ちになるのだった。