「南尾さん、お待たせしました」
夕方、ライブ会場の最寄り駅で南尾と待ち合わせをしていた。
見つけられなかったときにすぐ連絡できるようにスマホを片手に歩いていたのだが、会場時間が近いのもあるのか若い女の子でごった返した駅前でもイケメンの南尾は周りから注目されていて見つけやすかった。
「そんなに待ってないから大丈夫だよ。
すごい人混みだったから見つけてもらえてよかった」
そう苦笑しながら周りを見回した南尾の正面に立つと、沙弓は真っ直ぐな視線で南尾を見つめて口を開いた。
「あの……会って早々に言うことではないかもしれないですけど、今日のライブを心置きなく楽しみたいので言わせていただきます」
そう前置きすると南尾は何の話か勘づいたのか、苦笑した笑みはそのままに沙弓の正面に立つように体の向きを変えた。
「今日までちゃんと考えてきたつもりですが……ごめんなさい。
お試しでもお付き合いすることは考えられません」
「……それはやっぱり彼がいるからかな?」
「……はい」
“彼”と言われて沙弓は陽人を思い浮かべるとしっかりと頷いた。
その迷いのない返事に南尾は肩の力を抜くと残念そうな表情を浮かべながらも了承の意味を込めて頷いた。
「本当は答えは等の昔に分かってたんだ。
嶋川さんの俺を見る目と彼を見る目が違ったからね」
「そ、そんなに違いますか?」
「うん、全然違う。
……俺が嶋川さんの眼差しの向こうに立っていたかったんだけどなぁ」
そうして少し悲しそうに呟く南尾に罪悪感を覚えるが、ここでそんな素振りを見せることほど失礼なことはないだろうと沙弓はグッと堪えた。
すると南尾は大きく息を吐き出すと、次にはいつもの爽やかな笑顔を浮かべていた。
夕方、ライブ会場の最寄り駅で南尾と待ち合わせをしていた。
見つけられなかったときにすぐ連絡できるようにスマホを片手に歩いていたのだが、会場時間が近いのもあるのか若い女の子でごった返した駅前でもイケメンの南尾は周りから注目されていて見つけやすかった。
「そんなに待ってないから大丈夫だよ。
すごい人混みだったから見つけてもらえてよかった」
そう苦笑しながら周りを見回した南尾の正面に立つと、沙弓は真っ直ぐな視線で南尾を見つめて口を開いた。
「あの……会って早々に言うことではないかもしれないですけど、今日のライブを心置きなく楽しみたいので言わせていただきます」
そう前置きすると南尾は何の話か勘づいたのか、苦笑した笑みはそのままに沙弓の正面に立つように体の向きを変えた。
「今日までちゃんと考えてきたつもりですが……ごめんなさい。
お試しでもお付き合いすることは考えられません」
「……それはやっぱり彼がいるからかな?」
「……はい」
“彼”と言われて沙弓は陽人を思い浮かべるとしっかりと頷いた。
その迷いのない返事に南尾は肩の力を抜くと残念そうな表情を浮かべながらも了承の意味を込めて頷いた。
「本当は答えは等の昔に分かってたんだ。
嶋川さんの俺を見る目と彼を見る目が違ったからね」
「そ、そんなに違いますか?」
「うん、全然違う。
……俺が嶋川さんの眼差しの向こうに立っていたかったんだけどなぁ」
そうして少し悲しそうに呟く南尾に罪悪感を覚えるが、ここでそんな素振りを見せることほど失礼なことはないだろうと沙弓はグッと堪えた。
すると南尾は大きく息を吐き出すと、次にはいつもの爽やかな笑顔を浮かべていた。



