二人を繋ぐ愛の歌

「ん……」

眩しい日差しを感じて沙弓はゆっくり目を開けた。
どうやらいつの間にか眠ってしまっていたらしく、体を起こすと隣に寝ていたはずの陽人はいなかった。

「……陽人?」

小さく名前を呼びながら寝室を出てリビングに行くと、テーブルの上にラップがかけられた朝食とメモが置いてあった。

“今日のライブ楽しんで”

そう一言だけ書かれたメモを見て、陽人が沙弓を起こすことなく朝食の準備をしてくれた上でライブの準備へと向かったことが分かった。

「……起こしてくれたら良かったのに」

昨日一日だけだけれど、この部屋でまったりと一緒に過ごしていた陽人の存在がいないと分かると急激に寂しさを覚えた。
昨晩には陽人が座っていた椅子にハルトのぬいぐるみが座らされていたのに気付いて近付くと、ハルトのぬいぐるみの足の上に小さな紙袋が置かれていた。

「これ……“お土産!”……?」

紙袋に貼り付けられていたメモ用紙を見てから開けてみると、そこには和柄の小さな巾着のような物が入っていた。
手に取って目の高さまで持ち上げると不意にレモングラスの爽やかな香りがして、その瞬間に以前陽人が電話で言っていたことを思い出した。

ーーいろんな和柄の小物とか売ってて……そこで沙弓にいいなって思った物があったんだけど、そう思った瞬間にお婆さんに“好い人がいるのね”って微笑まれてさ。

きっとこれがその“沙弓にいいなって思った物”なのだろう。
沙弓はその爽やかな香りに目を細めるとそっと胸に抱き締めた。