さて、ここで困ったことがおきた。
沙弓の家に泊まりに来るような人はいないので、シングルベッド一つしかないし来客用の布団もない。

それならばと沙弓がうたた寝していた小さめのソファで寝ようと提案したが陽人に却下された。

「だから、一緒に寝たらいいだろ?」

「そ、それは駄目っ!」

「何で?何もしないって言ってるのに信用できない?」

そういう問題じゃないと沙弓は叫びたかった。
想いを通わせ合ってはいても恋人ではない相手を一晩泊めて、さらに一緒に寝るだなんて沙弓の心臓が持ちそうになかった。

「シングルだから狭いし……」

「くっついて寝れば大丈夫」

「それは……逆に眠れないかと」

「俺は眠れると思うから平気だけど?」

「陽人のことじゃなくて私が……きゃっ!?」

言ってる間に急に沙弓の体が宙に浮いた。
いや、陽人に抱き上げられて浮かされたと言った方が正しかった。

「もう面倒だから連れてく。
寝室はこっち?」

「あ……ちょっ、ちょっと待って、お願いっ!」

今陽人に寝室に行かれては困ることを思い出し、慌てて止めようとするけれど陽人の足は止まらない。
決して広くはない間取りの為すぐに寝室に着くと陽人は躊躇うことなくドアを開けた。