「昨日、呑んでる途中に沙弓が席を外したでしょ?その時沙弓のスマホに着信があって、私も酔ってたし鞄の中からスマホ勝手に出しちゃったのよ。
画面見たら“陽人”って表示されてたし、出てみたら案の定ダサメンの人だったし……」

「勝手に出たの!?」

「だってしつこく鳴ってたし、沙弓全然戻ってこなかったんだもの!
それにあの時はややこしい事態にした当事者の一人に文句言ってやらないと気が済まなかったのよ!!」

「文句言ったの!?」

さっきから驚きの連発だ。
遥から語られる昨夜、席を外したほんの少しの間の知らなかった出来事を聞いていたら頭痛しかしなくなった。

「大分キツい事も失礼な事も言った気がするけど、酔っててあまり覚えてないから代わりに謝っててくれる?」

「覚えてないの……?」

「私が一方的に話してたのは覚えてるんだけど……。
それにしても陽人さんって本当に無口な人なんだけど、どこかで聞いたことあるような声だったのよねー」

「そ、そう?どこにでもいるような声の人だと思うけど……?」

やはりファンともなったら声だけで正体を見破れるようになるのかと沙弓は内心焦っていた。

今日帰ったら陽人に昨夜の遥との電話の事を聞かないとと思ったが、そんな時に限ってイレギュラーな仕事が入り残業が決定してしまうのだった。