「さあ、聞かせてもらうわよ?何でいきなりこうなったのか」

店に入ってすぐ注文したものが一通り揃ってから遥に説明を促され、沙弓は小さく頷くと重々しく口を開いた。

陽人とまだ付き合っていないことを知った時の南尾の言葉、Shineのライブに一緒に行くことになった経緯、そして今日の出来事。
一つ一つ丁寧に説明していくと遥はどんどん眉間に皺を寄せていった。

「何それ、何でいつの間にそんな面倒臭い事になってるのよ」

「私も何でこんな事になったんだか……」

今朝までは陽人との電話で寝不足だった事を少しだけ悩んでいただけだった。
それが南尾の言葉のせいで、全く違う事を悩まざるを得なくなってしまったのだ。

「沙弓ってモテ期なの?羨ましい悩みよねー」

「羨ましくないよ……仕事やりづらいし、気持ちに応えられないのにアプローチされても困るし。
第一、告白されてもないのに“あなたに可能性はないし、興味もありせん”なんて言えないし……」

いっそのこと、はっきり想いを告げてくれたら、きっぱりごめんなさいと断れるのに……。

そう溜め息をつくと遥は、そうよねーと頷いた。

「南尾さんの言動は告白したも同然なんだけど、はっきり告白されたわけでもない。
なのに“好きじゃないから構わないで”なんて言ったら何様!?ってなるものね。
強く断られない……もしかしたら、それが南尾さんの狙いかも」

そう呟く遥の言葉を沙弓は肩を落としながら聞いていた。