「ちょっと沙弓、どういう事なのよ!?」

出社してくるなり遥が慌てた様子でやって来たかと思うと、隣のデスクに乱暴に鞄を置いて椅子に座ってじっと見つめてきた。

「私が出社した瞬間から沙弓と南尾さんの事いろんな人から聞かれたのよ!二人はいつから付き合ってるんだって!
あんた、この前のダサメンはどうしたのよ!?」

すごい勢いで問い詰められ、寝不足な中、朝から混乱することがあったせいですでに疲れ果てていた沙弓は深く息を吐いた。

「付き合ってない……」

「え?」

「南尾さんと付き合ってない!」

大声にならないように注意しながら沙弓は遥に真剣な眼差しで訴えかけた。
じっとお互いの目を見つめ合うこと数秒、遥が表情を崩さないまま徐に口を開いた。

「……今日、呑みに行くわよ」

その一言で、遥が就業後ゆっくり話を聞いてくれる事を察した沙弓はしっかり頷いた。

始業してからというもの、仕事はとにかくやりづらかった。
南尾を狙っていたであろう女性からの嫉妬混じりの視線や化粧室に行った時にあからさまに聞こえてくる陰口、回ってくる期限ギリギリまで溜め込まれた書類。

何とか気にしないように必死になって仕事を終らせ遥と二人、値段は少し高めだけれど個室があり、密会にはバッチリな店へとやって来た。