どうやら顔だけでなく大切な人に対する独占欲も父親譲りらしく、いつか沙弓を手に入れたら場所など関係なくイチャイチャして、ひたすら愛の言葉を囁くようになるんだろうなと陽人は近い将来の自分の様子を察してしまった。

それは想われ人である沙弓にとって、とても恥ずかしくて耐えられない状態なのかもしれない。
そうなれば確かに沙弓は“可哀想”と言えなくもないが、だからと言って沙弓を手放す気は今更なかったーー。

「……沙弓、覚悟しといてよ?」

『え?覚悟?何の?』

「いや、こっちの話」

不思議そうな沙弓に軽く忠告だけしておいて、その後暫くはとりとめのない話をした。
たまにからかったりしながら楽しい時間を過ごした後、通話が終了したスマホを手に持ったまま陽人は後ろに体重をかけてベッドに仰向けに寝転がった。

めちゃくちゃ可愛かった。
顔を見たかった。

照れていた様子の沙弓の顔をこの目で見たら、絶対自分の感情を押さえきれずにいたであろうことを思うと、やはり電話で良かったのかもしれない。

……こんな葛藤をしなくてもいいように、早く自分だけのものにーー。

そう強く想った瞬間、陽人は目を見開いて勢いよく身を起こした。
そして側にあった机に早足で向かうと乱暴に椅子に座り、近くにあったペンを手に取って広げられていたノートに一心不乱に何かを書き付けていった。