それからもハルトに話は振られることはなく、ずっと司会者とユウナが話していた。

何故ハルトの想い人が可哀想なのかと聞かれていたけれど、ユウナはその問いかけには答えなかった。
曰く、本当に想い人が出来たときにその理由を聞いて逃げられてしまうのは困るから。らしい。

そんな話を聞きながらハルトは沙弓の事を考えていた。

野望を達成するまでは恋人にはなれないけれど、確かにハルトは沙弓の事を想っている。

ユウナが言う“想い人が可哀想”と言うのが恋人に出来ない事を言っているのか、それともビアガーデンの時のような一部の熱狂的なファンによる嫌がらせが少なからず生じる可能性がある事を懸念しての事なのかはわからないが、想い人である沙弓が“可哀想”などと思われないように何があっても護りきろうと収録そっちのけで固く心に誓った。

収録が終わり、ユウナと共に周りの人に挨拶をしながら堀原に指示されてスタジオを出ると、眠さの限界なのか大きな欠伸をしたユウナに苦笑した。

明日は堀原が予定をなんとか調整して作ってくれた貴重な休日だ。
恐らくユウナは目が覚めるまでぐっすり寝るだろう。

今にも寝てしまいそうなユウナと、そんなユウナが寝てしまわないように淡々と話しかけている堀原の後ろ姿を見ながら、明日は久し振りに沙弓に電話してみようと思ったのだった。