その日のライブの様子とインタビューはすぐに記事にされ、書店に並ぶ前の予約の時点で販売数を上回ってしまい急遽増刷することになったと連絡があったらしい。

何でも一人で数冊予約している人もいるらしいと言うので、何でそんなにいるのかと普段疑問に思っていたことを口にしたら堀原がさらっと答えた。

「世間では読む用、保存用、観賞用の三冊買う人が多いらしい」

「いや、保存や観賞してどうするの。
本なんだから読んでよ」

堀原に言われた事に素でそう言うと、ユウナがキョトンとしながら首を傾げていた。

「え、それって普通じゃないの？お母さんもお父さんもそれぞれお互いが出てるいろいろな物を二つずつは買ってるよ？
実用、保存用、だったかな？」

「うわ……マジか……」

知りたくもなかった両親の話にハルトは眉をひそめた。

未だにお互いが好きで仕方ないと言った様子の二人は頻度はそれほど高くないが、ハルト達の前でも自然とイチャつくのでいい加減辟易していた。

ここ最近は沙弓を早く手に入れたいのに出来ないという歯痒い思いもあって余計にうんざりしているのだけれど、それを知らないユウナは笑顔で
さらに爆弾を投下した。

「かく言う私も、隆君の出てる雑誌やパンフレットやグッズは絶対二つずつ買ってるんだけどねー」

にやけた顔をしながらそんなことを言うユウナの頬を無言で摘まみ思い切り横に引っ張ると、ユウナは微かに抵抗した。

自分にはまだない幸せを持っている奴がここにもいたかと、ハルトは呆れた堀原にライブが始まるからと止められるまでユウナの頬を弄び続けた。