カウントダウンが0になった瞬間に颯爽とステージに登場し、歌いながら中央まで歩いてユウナと背中を合わせる。

それぞれ交互に歌い、盛り上がるサビでハモるのだが、その時の照明が気になって合図を出して音楽を止めてもらった。

『すみません、右側のスポット……そう、それです。
もう少し左に……はい、そこで大丈夫です。
ありがとうございます』

気になる所があればマイクで声をかけてその都度調整し、納得すると必ず一言礼を言ってリハーサルに戻る。

この日、この瞬間の為に時間を作り、お金を払ってわざわざ見に来てくれるファンの人達のために、最高の歌を、最高の演出で、最高のステージとして見てもらうために小さな事でも妥協するなど許せなかった。

そのため自分にもスタッフにも厳しくなり、自然と細かい注文も多くなるのだが、ハルトの想いをみんなが理解してくれているのと毎回反省会でユウナと共に心からスタッフを労っているのが有り難くも伝わっているので、反感を持って反発してくる人は滅多にいなかった。

それにーー。

『Shineさーん!!そこでの振り、もっと大きくお願いしまーす!!この角度から見えにくいですー!!』

観客席からステージと特大モニターの見え具合を確認していたスタッフからマイク越しに声がかかるとすぐに音楽が止まる。

『分かりましたー!すみません、今のところもう一度お願いしまーす!!』

ユウナが応えて再度音楽が鳴らされると、二人とも指摘された箇所を腹を立てることもなく的確に修正する。

指摘し合い、一つのステージを完成させていく。
長年支え合ってきたShineとスタッフの関係は強固な絆で結ばれていた。