二人を繋ぐ愛の歌

「っ……駄目だよ、沙弓。
男にそんな顔したら……」

「そんな顔って、陽人が」

あんなこと言うから……!と言い終わる前にカタンッとカウンターテーブルに何か置かれた音がして慌てて陽人から離れた。
すると水を出してくれた女将とカウンター越しに目が合うと、あら。と目を丸くされた。

「やだ、お邪魔しちゃった?気にしないでどうぞ続けてちょうだい?」

「つ……続けられるわけないじゃないですかっ!!」

楽しそうに目を細めている女将に真っ赤になりながら言うと女将は実に楽しそうに微笑んだ。
温かい笑みを浮かべるその笑顔に以前朝陽と真未に向けられた温かい眼差しを思い出し、その眼差しの意味をやっと理解すると沙弓はカウンターに両肘を付いて頭を抱えた。

「もしかして、もしかしなくても、秋村さん夫妻はこうなることを分かってたのかな……?」

「こうなることまでは予測してなかったかもしれないけど、俺の気持ちはあの時すでに察してたと思うよ。
特に朝陽君は沙弓が初めてメッセージくれた時に一緒にいたからその時には勘づいてたはずだよ」

そう苦笑しながら言われて沙弓はコツンとカウンターに額をくっつけた。

「恥ずかしい……穴があったら入りたい」

「じゃあ俺もその穴に一緒に入れてもらおうかな。
そうしたら二人きりだし、周りを気にすることなく何でも言える」

妖艶な笑みを浮かべてとんでもないことを言う陽人に少しだけ顔を向けて睨み付けると陽人は愛しそうに、そして楽しそうに目を細めて微笑んだ。