二人を繋ぐ愛の歌

「ありがとう沙弓、助かったよー」

「どういたしまして」

二人がかりで書類と格闘し少しばかり残業してから会社を出ると、遥はどこに行こうかと足取り軽く進んでいた。

昼休憩の時とえらい違いだなと苦笑しながら沙弓は遥の後を付いていこうとしたが後ろから誰かに声をかけられた気がして振り返ると、そこには南尾が笑顔で立っていた。

「お疲れ様、今から帰り?」

「お疲れ様です。
帰る前に遥を励ましに行きます」

「励ます?何かあったの?」

「Shineのライブチケットが買えなかったんです」

苦笑してそう答えると南尾はShineと言っただけで一瞬眉を寄せたがすぐにいつもの表情に戻した。
その一瞬の反応に気付いた沙弓は以前のCM撮りの時にハルトが南尾に釘を刺されたと言っていたのを思い出した。

「……そっか、それは残念だったね。
でも、Shineの人気はそれだけ凄いってことだよ」

「そうですね、そう思います」

「……嶋川さんもShineのファン?一緒にライブを見にいく予定だったのかな?」

南尾にどこか緊張したような声で聞かれ、沙弓は首を横に振ると肩を竦めた。

「私はファンではないんですけど、今回縁あって一緒にお仕事させてもらったのでライブに行ってみようかなって思ったんです。
……チケットがこんなに早く完売するって知らなかったので買えなくて、結局行けませんけど」

苦笑いしながらそう言うと南尾はやっと緊張を解いたようで表情が柔らかくなった。
一体なんなのだろうかと思っていると後ろから急に気配もなく誰かに腕を掴まれて驚きのあまり飛び上がりそうになった。