風の向かう場所を、 知っている人は誰もいない。 風が生まれる瞬間を、 風が死ぬ瞬間を見たという 話も聞いたことがない。 そして、 風はその場に留まることはない。 流れ続ける時間と同じで、 常に吹きっさらしだ。 私の涙を拭うためでもなければ、 背中を押すためでもない。 ただ、どこかへ向かうかのように 吹いていた。