「実里ー!起きなさーい!」

「うーん…」

「今日早く行くんでしょー!」

「うーん…」

お母さんの声が小さく小さく聞こえる。

あぁ、気持ちいいな…このままもう少し…

「実里!」

「はい、起きます!」

頭にダイレクトに響く声で、私はようやく目を開ける。

ボーッとした頭で、カーテンを開くと、朝日が部屋を照らした。

「うーん!」

大きく伸びをすると、何とも言えない気持ちよさが体を襲う。

起きるのは嫌いだけど、朝は好きだ。

綺麗な空気は心を明るくする…なんてね。

「お母さん、ご飯できてる?」

身支度を整え、リビングに入るとコーヒーの香りが鼻を掠めた。

「お母さんはあんたの何時間も前に起きてるの。」

「だよねー!」

聞くまでもなかったか。

用意された朝御飯は、トースト一枚に目玉焼き。

それと…

「お母さん、サラダはいらないってばー」

「何言ってるの、ちゃんと食べなさい。」

「だってこんなの草じゃん。」

「その草がないとあんたブクブク太っていくだけよー」

野菜を食べる、食べないの攻防戦をお母さんとした後、結局負けたのは私。

食べなければいけないと分かっていても、食べたくないのは仕方がない。

「あー、やだやだ。」

「そんな顔して食べないの。」

「はーい。」

お母さんに怒られながら、サラダを口に入れる。

やっぱり嫌いだ…

「あ、今日お母さん遅くなるから。

お父さんも最近忙しいみたいなの。

一人で大丈夫?」

「私もう17歳なんだけど。

全然余裕ですー」

「娘を一人にする親の気持ちがわからない?」

「分かんない。」

小学生ならまだしも。

そんなに心配なものかな?

「ま、いいわ。

とりあえず、戸締まりだけはしっかりしてね。

今日雨降るみたいだし。」

「おっけー。」

お母さんの言葉に軽く返事をし、テレビをつける。

丁度お天気のお姉さんが、『激しい雨に注意してください』と言っているところだった。