あなたの幸せだけを願う

「陽~!こっちこっち」

身長の大きな優斗が手を振ればこんな人混みの中でも簡単に合流ができてしまう。

「浴衣!可愛いね花」

「バカ!お前が先に言うことじゃねぇだろ!」

いつものデジャブな光景に私は笑ってしまった。

「ありがとう優斗」

「あと、その髪「それもお前の言うことじゃない」」

そう言って口を抑えられた優斗。

これが私たちの日常。
どんな時だってそれは変わらない。
それが幼なじみってものなんだと思う。

少しすると遅れて陽がやってきた。

浴衣姿の陽はいつもとは違うくて、いつも以上に目を引かれた。

陽の事を見ていると何かを見つけた様な目をした。

この横顔はいつも見ている。
見飽きるくらいに………

嫌な予感がした。

「陽?」

私の呼ぶ声に返事をしないのは「陽ー!」いつだってその目線の先にあの子がいる時だ。

陽の視線を追うとやっぱり………

「陽!何ぼーっとしてるんだよ」

「もうすぐ花火始まるぞ」

彼女の姿があった。

『あの、俺………』

「何か食べよーよー「行ってきなよ」」

「え?」

驚く顔をした3人。

「行ってきていいよ」

私が聞きたかったのは『でも……』あの子の悪口とかじゃない。

「浴衣!似合ってる!」

「だから、大丈夫だよ!自信もって!」

陽……私ね、陽の幸せしか願ってないよ。

「一緒に花火……見られるといいね!」

『ありがとう……花』

そう言って陽を送り出す。
履きなれてない下駄で走る後ろ姿を見ていると視界がぼやける。