「紅羽。もしかして、俺のこと避けてる?」

そう言う太陽は、半信半疑といった表情を浮かべている。

これは……。

鈍いのによく勘づいたと言うべきか、やっぱり鈍いと言うべきか。

いやそんなのは問題じゃない。ここをどう切り抜けるかである。

十分間の休み時間も間もなく終わる。向かう講義室は割と遠いのだ。

教室からは人気がなくなっている。色んな意味で紅羽は焦った。

「避けて? いや……そんなことないけど」

ど、どうだ。

紅羽は嘘が上手くない。太陽が鈍感なことが唯一の頼みである。