なんだかよくわからないが、紅羽が竜巻のように去っていった。

部室に取り残された太陽は、呆気にとられてドアを見つめるしかない。

よく……わからないが……紅羽がいると彼女を意識しすぎてしまっていたので、ちょうどよかったのかもしれない。

メジャーのコードを鳴らしてみても、なんだか味気ない。

腹から歌がせり上がってくるような衝動もない。

期末テストが終わっていてよかった。今日は一日中、頭が働かなかった。

身を屈めて紅羽の耳に唇を寄せた、あの男を思い浮かべると、無性になにかを殴りたくなる。

昨日は予想だにしないことに凍りついていたが、思い返せば返すほど、イライラしてくる。

気だるくギターをかき鳴らしていると、突然に古びたドアが開けられた。