部室に戻って、紅羽はすぐにキーボードを片づけた。

善は急げ、思い立ったが吉日である。

どうせこのままでは、ろくな練習にならない。

「烏丸紅羽、帰ります!」

誰とはなしに宣言して紅羽は部室を急ぎ出た。

帰ります、とは言ったものの、本当に帰るわけではない。

校内にいるかは定かではないが、探してみる価値はある。

いなければ明日会いに行けばいい。

けれど今はじっとしていられないのだ。

さして親しくもない後輩の顔を思い浮かべながら、汗ばむ体で廊下を駆けた。