焔は一本前の電車に乗って駅を去っていた。

彩人たちとは方面が違うのである。

「しっかりするんだ」

ペットボトルを彼の手に握らせた。

太陽は焦点も合っていなければ力も入っておらず、彩人の方が不安になる。

太陽の家まで送っていこうか……。

「……たんだ……」

「え?」

死人のような声がかすかに漏れた。

太陽の口に耳を寄せると、小さな声が届いてくる。

「……あの男……、俺と目が合ったんだ……。そのあとで紅羽に……」

「よしわかった。忘れろ太陽」