スマホが着信を告げた。

机の上に置きっぱなしにしていたそれを、素早く紅羽は取り上げる。

もう六月になろうとしていた。

電話の相手が誰かは、見ずともわかった。

「──はい」

『あ、紅羽ー? 俺俺ー』

その挨拶はなんとかならんのか。

ため息を返事に変える。

土曜日の昼下がり、自宅である。

レースのカーテンの向こうで雨が降りしきっている。

「光輝、今どこなの?」

『紅羽んとこ、雨降ってる?』