「……ううん。太陽くんと曲作りたいなって、そう思っただけ」

「そっか」

そうやってまた嬉しそうに笑う。

やめてくれ、私はいつか、いなくなるのに。

ふいっと紅羽は顔を逸らした。

太陽は浮かれて、ノートを取り出している。

光輝が帰ってきたらバンドを抜けるつもりでいることが、だんだん言いにくくなってきていることに気づいていた。

言いにくいというより、言いたくないと思い始めていることには──目を向けないようにしている。

大切にしたい思い出と、守りたい日々が増えるほど、紅羽はミッドデイクロウから離れがたくなっている。

心を預けて、なんて、あまりにも恋が溢れているようなことを言わずに済んでも──もはや手遅れなのかもしれなかった。