幼馴染との正しい距離感

こーくんだから
あんなにどきどきするのか、恥ずかしいのか。


誰かと付き合ったり
恋愛対象として好きになった人がいない私には
分からない。



「……矢橋君は
あんた以外、拒否しそうだけどね」



ちらりとミキちゃんの視線が廊下へ。


そこには、こーくんの姿。



教室にいるとクラスの
女の子に捕まって面倒だからと

授業が始まるまで
こーくんはいつも、私のところにいるか
あんな風に廊下で男友達と話してる。


直前まで話していた男友達がいなくなった途端
こーくんは、女の子に囲まれていた。

けど、こーくんは
どうでも良さそうにスマホをいじってる。







♪~♪



机に置いていた
私のスマホが軽快な音楽と共に震える。



「こーくんからだ」

「なんて?」

「えーと…」



メールを開くと



『今日の帰り
駅前のクレープ屋さん、行かない?』



「だって」

「ほら見なよ
あんだけ女子に囲まれておきながら
完璧スルーしてつむぎにお誘いメールとか」



顔をあげて、こーくんに視線を向ける。

無表情だったこーくんは
私の視線に気づくと、ぱっと表情を変える。



「ほら。あのまばゆい笑顔
さっきまでと全然違う」



ミキちゃんが呆れ顔でこーくんを指差した。



「そうだねぇ…」



少なからず
こーくんに好かれてる自信はあるけど


それでもなんか…



「…今のままじゃだめなのかな」




「?何か言った?」

「ううん。なんでもない」



ぼそりとこぼした言葉をなかったことにして
私は、こーくんに返事を送った。