「……そういえば、こーくん」

「なに?」

「こーくんの一人称、たまに「俺」になるけど
それってなんで?」



こーくんの家で
机を挟んで課題に取り組んでいた私とこーくん。


手を休めた時に
ふと前から少し気になってたことを聞いてみた。



「…」



にこにこしてたこーくんは


急に笑顔を消して
焦ったように目を逸らして


何故か沈黙。



「こーくん?」

「……答えなきゃだめ?」

「気になる」

「…」



……
……
……



「…」



無言の応酬。


やがて


私の視線に耐えかねた様子のこーくんは
それはそれは深いため息をついた後に
重い口を開いた。



「……あれが素だよ」

「?どういうこと?」

「つむぎちゃん、覚えてない?
小、中の頃に好きなタイプの話しをしたこと」

「……そんな事話した?」

「話したの
で、その時につむぎちゃんが言ったんだ」



『アイドルみたいに可愛くて
物腰の柔らかい男の子が好きかな』



「って。……元々
僕はそういうタイプじゃなかったから
少しでもつむぎちゃん好みの男になれるように
見た目とか口調とか真似たんだよ」



こーくんは珍しく顔を赤くして
ものすごく言いづらそうに話す。