幼馴染との正しい距離感

部屋に戻ると
こーくんはドライヤーを手にとって



「はい」



ぽんぽん、と
私のお気に入りのクッションを
自分の前に置いて、叩く。



「?」

「座って。乾かすから」

「い、いいよ。自分でやるよ」

「いいから」



……笑顔だけど
有無を言わせない圧がある。


仕方なく、ふかふかのクッションの上に
ぽすんと座って、髪を乾かしてもらう。



「♪」



こーくんは何故か上機嫌。


さっきまでは
私の具合を気にしてか
いつもより表情や声が固かったけど


私の体調が回復してきたってわかった途端
いつものこーくんに戻った。



「…」



……小さい子みたいで
恥ずかしいけど……気持ちいい。


美容室とかに行った時も毎回思うけど
人に頭や髪の毛をいじられると
なんだか気持ちよくて、眠たくなってくる。









「はい。終わり」



うとうとしかけてた私は
こーくんの声にはっと我に返った。


仕上げに髪の毛をブラシでとかして
確かめるように、指ですくこーくん。



「つむぎちゃん髪、伸びたね」

「そうかな」

「うん。お姫さまみたい」

「お姫さまって大げさだなぁ」



……確かに昔の男の子みたいな髪型に比べたら
背中までの長さの髪でも
随分伸びたって言えるかもだけど。

それにしたって

お姫さまは言い過ぎだと思う。



「お姫さまはもっと綺麗だよ
髪も顔も、なにもかも」