…
…
…
「薬、飲んでないんですか?」
「そうなの。
なんとか少し食べさせたんだけど
薬を飲ませる前に寝ちゃったから」
「そうですか」
「ものを飲み込むのも辛いみたいでね
けど、飲まなきゃ治るものも治らないから
起きたら無理矢理でも飲ませてやって」
「分かりました」
遠いような、近いような
声が聞こえる。
お母さんとこーくんの声。
――ぱたん
扉が閉まる音が微かに耳に届く。
「つむぎちゃん」
「…………こー……く……」
呼び掛けられ、そっと目を開ける。
「薬、飲めそう?」
「…」
こーくんの声が、聞こえづらい。
まるで、耳の中に水が入ったみたい。
薄く開いた視界は、ぼんやり歪んでいて
頭がふわふわしてて
……。
…………これ……夢かな……?
夢と現実の境が曖昧で
……うん、きっと夢だ…
あんまりふわふわしてるから
私は夢だと思い込んでしまって
夢なら、このまま
もっと深くまで眠ってしまおうと
もう一度、目を閉じる。
「……かなり重症、かな」
珍しく、低い声。
その後に、かさかさと袋をあさるような音。
「ごめんね。つむぎちゃん
緊急事態って事で許してね」
膜で覆われた声がすぐ近くで聞こえる。
数回頭を撫でられて
それから
「………っ」
唇に冷たい感触。
口の中に何かが流れ込んでくる。
びっくりして吐き出しそうになったけど
どうしてか、それが出来ない。
出口が何かで塞がれていて。
柔らかい何か。
「……っ、ん……」
それ以外選択肢がなく
こくりと、飲み込んだ。
何が起きたのかよく分からない。
朦朧とする意識の中、うっすら目を開ける。
「…」
目の前には 整った綺麗な顔。
その瞳が少し切なそうに揺れていた。
…
…
「薬、飲んでないんですか?」
「そうなの。
なんとか少し食べさせたんだけど
薬を飲ませる前に寝ちゃったから」
「そうですか」
「ものを飲み込むのも辛いみたいでね
けど、飲まなきゃ治るものも治らないから
起きたら無理矢理でも飲ませてやって」
「分かりました」
遠いような、近いような
声が聞こえる。
お母さんとこーくんの声。
――ぱたん
扉が閉まる音が微かに耳に届く。
「つむぎちゃん」
「…………こー……く……」
呼び掛けられ、そっと目を開ける。
「薬、飲めそう?」
「…」
こーくんの声が、聞こえづらい。
まるで、耳の中に水が入ったみたい。
薄く開いた視界は、ぼんやり歪んでいて
頭がふわふわしてて
……。
…………これ……夢かな……?
夢と現実の境が曖昧で
……うん、きっと夢だ…
あんまりふわふわしてるから
私は夢だと思い込んでしまって
夢なら、このまま
もっと深くまで眠ってしまおうと
もう一度、目を閉じる。
「……かなり重症、かな」
珍しく、低い声。
その後に、かさかさと袋をあさるような音。
「ごめんね。つむぎちゃん
緊急事態って事で許してね」
膜で覆われた声がすぐ近くで聞こえる。
数回頭を撫でられて
それから
「………っ」
唇に冷たい感触。
口の中に何かが流れ込んでくる。
びっくりして吐き出しそうになったけど
どうしてか、それが出来ない。
出口が何かで塞がれていて。
柔らかい何か。
「……っ、ん……」
それ以外選択肢がなく
こくりと、飲み込んだ。
何が起きたのかよく分からない。
朦朧とする意識の中、うっすら目を開ける。
「…」
目の前には 整った綺麗な顔。
その瞳が少し切なそうに揺れていた。


