―――――― 


「いいですね。とにかく落ち着いて。」


「は、はい・・。」


黒部さんが受話器を取ると同時に、電話機に接続した多重イヤホンを耳につけた。


私もこれで犯人との会話を聞き取り、
必要に応じて黒部さんへ合図を送る。


アイコンタクトを受け取った新谷他、
部下の皆は逆探知を開始した。



「も、もしもし・・黒部です。」


<こんばんは黒部さん。
まずはリカさんの無事を貴方と警察に示す。


・・さぁ喋りなさい。
余計な事を言ったら殺すぞ。>


<・・・・お父さん・・・・・・。>



「リカ・・・?リカ!!」

<お父さん・・・助けて・・・。>



一気に取り乱した黒部さんの反応から見て、

電話の向こうで聞こえてきた女性はリカさんで間違いない。


最初に出た犯人の声。

多少なりとも予想はしていたが、
変声機を使っている。

よくテレビ番組で元犯罪者や、
万引き主婦の声として使われるような、

少し甲高いタイプのものだった。


声紋という証拠を残さないこの用意周到さ。

向こうも計画を練りながら、拉致できるターゲットを物色していたという所か・・。