「恐らく・・後者だ。」
「と言うと・・?」
「犯人ははっきりと“目的は金だ”と言っている。
だったら・・・
もし黒部さんの事を知っている人物なら、
恐らくこの家はターゲットにしない。」
「何でですか?」
「新谷お前、
“バチスタ手術”って知ってるか?」
「いえ・・知らないです。」
「・・・・・・私もだ。」
「ありゃ・・?
そのバチスタがなにか?」
「内容はよく分からんが、
名前からして高そうな手術じゃない?」
「まぁ・・大抵の手術はお金がかかりますよね・・・・あ!そっか。」
「奥さんがその手術を受けて、
今も入院を続けてる。
正直・・身代金を用意できてホッとしてるよ。」
「お金を持ってそうな家か、
そうじゃないか・・・
もし黒部さんの顔見知りだったらターゲットにする選択はしないってことですね。」
「黒部さんも気の毒にな・・。
犯人はそんな事情もつゆ知らず、
平気なツラして500万もの大金を要求してきたってところだろう。」
「犯人は病院からここまでの帰り道にリカさんを拉致したと見て、
付近一帯の聞き込みを続けています。」
「うん、よろしく頼・・」
“プルルルルル プルルルルル”
「「!!?」」
ついにきた。
嵐の前の静けさが包んでいた黒部家に、
それを切り裂くコール音が・・
開戦の合図が鳴り響いた。



