新谷本部長は、しばらく押し黙った後、
何かを思い出すように少し上を見上げた。
「先日の西平ヤスシの犯行自供は、私達神奈川県警でも大きな騒動となりました。」
「・・・・・。」
「しかし、県警として出した判断は、
【再捜査はしない】です。
黒部リカさん誘拐事件自体は、
既に時効が成立している。
それに・・西平は裁判長が横浜出身の人間だと知って、
死刑が怖くてあのような事を言ったのだろうと。」
「犯人と当時の捜査関係者しか知らない情報を口に出したというのは?」
「確かに“赤い上着”の件はあの当時、
世間には公表しませんでしたが、
裁判長が知っていたように、
捜査関係者との接触の機会があれば知り得ることの出来る情報です。
西平が何らかの過程でそれを知っていてもおかしくはない。
それだけで“犯人だ”と断定するには軽率すぎる・・というが我々の見解です。」
「なるほど・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「じゃあ・・そのような神奈川県警としての見解・判断を下した・・
張本人であるはずの新谷本部長が・・
どうしてここへ・・?」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・。」



