「それでは被告人。
判決を言い渡しますので前へ。」
ここまで、逮捕したあの時のように無表情を続けていた西平が立ち上がり、
傍聴席に対して背を向ける形で、
裁判官の前に立った。
「被告人。
判決を言い渡す前に、
何か言っておきたい事はありますか?」
「・・・・・・・・・・・・・・。」
「無いようでしたらこのまま進めます。」
「・・・・・・・フッ・・・・・。」
・・・?
・・・・・・なんだ・・?
「フッ・・・フッ・・・裁判長。
1つだけいいか・・?」
「なるべく簡潔にお願いします。」
「弁護士さんから聞きましたよ。
お前ず~っと長年、
横浜の高等裁判所に勤めてたらしいなぁ?」
「被告人。本件と関係ない内容でしたら発言を却下しますよ?」
「だったら俺が今から言う事もピンとくるはずだ。」
「・・・被告人。発言を却下して、
今から判決を言い渡し・・。」
「黒部リカは俺が誘拐した。」
「!!?」
黒部リカ・・・・?
・・・誰だ・・・?
というか・・“誘拐”・・だと?
一瞬にしてこの場の空気が固まったのを感じた。
裁判長の表情が凍り付くのをこの傍聴席からも見て取れる・・。



