最終章




捜査6課 神野シン
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スマホの画面に映し出された“現在地”。


病院のすぐ近くに停めたタクシーの後部座席で、その動きをじっと待っていた。


「刑事さん。アンパンと牛乳買ってこようか?」


「いいけど、マル被が動いたら勝手に運転させてもらいますよ。」


「チェッつまんないの。
張り込みの定番でしょ?」


すっかり俺の御用達になってくれた運転手さんが退屈そうにハンドルにもたれかかる。




それにしても・・何故動かない・・?


夜勤がある看護師でもないのに、
この時間になっても徳永は病院から出ない。



『盗聴器からは何か聞こえてきますか?』


「いや・・特に誰かと会話しているわけでも、独り言を呟く訳でも無い。」


右につけたイヤホンに耳を澄ませながら、左から聞こえる声に向かって答える。