「お話は分かりました。
思い出せる限り、頑張ります。」


「ありがとうございます。

先生は数少ない“証人”。
なんとか辿り着けて良かった。」



閃いてくれたのはヒデさんだった。


リカさんは母親が入院していた病院へ見舞いに行った帰りに拉致された。


黒部さんと交代で行っていた母親の看病。


結果的にそのルーティンをXにつけ込まれてしまったが・・

ヒデさんが注目したのは“母親の入院”。


20年経った今も、彼女が通っていたヨコハマ総合病院はまだ立派に建っていて、

母親の主治医だった・・

“バチスタ手術”の第一人者として名の知れてるらしい・・

心臓外科医 徳永ミツル先生もご健在だった。


“健在”と言うと失礼になるかもしれないが・・


「もっとお爺ちゃん先生だと思ってました。」


「ハハッ“初めまして”の方にはよく言われます。

“バチスタを日本で最初に執刀した医師”として皆様に認知頂けるのは光栄ですが、

中学卒業後からずっとアメリカで勉強していたので、

技術を身につけ帰国した時もまだ26歳でしたよ。」


ヒデさんと同じくらいの歳に見える徳永先生のその見た目は、

医者という堅っ苦しいイメージとは程通い、柔らかい物腰だった。